写真家 三輪浩光・平澤最勝による、「野乃子」を交点とした写真展「対角線」

INTRODUCTION ごあいさつ

三輪浩光と平澤最勝。
それぞれの場所で、いかにも不安げに発生した2点はまだお互いを、自身のことすら知らない。
何を知りたいのかも知りきれない2点は、闇の雲を分けて動き出す。
それぞれの場所で、それぞれの光と闇に翻弄され、それぞれの道を、線となり延びていく。

覚束なく延び続ける線となった2点は、ある時衝突し反応しあう。
その奇跡的な交点は、線となった自らにとってはあまりに瞬間的なもので、近く目覚めを控える夢のようだった。

瞬きひとつの間に、彼ら
海底のように暗く輝き、けたたましく静寂する。
光の速さで静止し、捉えられないほどの存在感を放つ。
音の無い耳鳴りを生み、あまりの無彩に目が眩む。
前例の無い普遍性に、あまりに夥しい唯一無二。

夢のような「瞬間」のち、 足が掬われるほどの「日常」を余韻に彼らは
ひたすら歩みを止めない。
奇跡的な交点からまた、線として「日常的に」延びていく。
また幾つもの知らない点を越えて、行き着く所を見つけるまで彼らは点には戻らない。
夢を何度も繰り返し、いつか、すべてが、終わったとき

描かれた対角線は、
まぶしいほどふるくさく、
さびつくほどあたらしい。



今回その「交点」を担う野乃子です。宣伝周りのデザインやキャッチフレーズをはじめとするテキスト回りも担当しています。
三輪浩光、平澤最勝。
その2人の写真家に私はある時全く別々に出会い、
また、私の知らない場所で、2人も出会っていました。

初めて撮影をして頂いたのは、おそらく三輪さんは6年前。最勝さんはおよそ4年前。
三輪さんには私の地元に近い小さな都会で。最勝さんには彼のホームである不思議な町で。
初めての撮影では、お互いの共鳴にお互いが驚き、自然光がすっかり変わってしまうまで夢中で撮影しました。
それからおそらくは、それぞれがそれぞれに出会い別れる中、私たちの撮影は様々な時と場所を経て続いています。
スタジオなどに入る事は滅多に無く、いつでもカメラと大きな荷物を2人でぶら下げて、いろんな場所へ行って、時にはちょっと無茶をして、あやしい人と間違われることも。
いい写真を撮るためなら挑戦や未知を恐れず、いつも新しいテーマを提案してくれる2人には、私も高揚と喜びをたくさん頂きました。

今回その「それぞれの時間」を客観的に、また自覚を持って観客として楽しめることは、私にとって大きな喜びであり、
機会を設けて下さった2人には感謝しています。
この企画をひとつの区切りとし、2人のこれから向かう先も非常に楽しみです。

その「交点」を主観的な象徴として構築された今回の企画は、客観的な「写真展」としても十分に魅力的なはずです。

迫る静寂と「光」とそれに因る「闇」で、独自の美しさや息遣い、拘りを表現する三輪浩光の繊細な作品。
語らぬ轟音で「日常」に巣食う「非日常」を、あくまで泥臭く執拗な説得力で表現する平澤最勝の力強い作品。

一見まったく異なる性質を持つ二人の作品が、今回初めて正面から衝突し、邂逅する。
そこに新しい空間が生まれ、新しい「交点」がその日またひとつ誕生することを、私は強く予感しています。

どうぞ2人の邂逅を、またそれぞれの純粋な作品としての魅力を、ぜひご来場の上、体と心で感じてください。

最後に、カメラや写真のことも大して詳しくない私が今回のご挨拶を
あまりにも自分の視点でさせて頂いたこと、どうかご容赦くださいませ。


野乃子

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